次世代を導く”真のアントレプレナー”をどうすれば養成できるのか。

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どうも。こんにちは。
論文の締め切りから逃げて、ここへやってきたくらもんです。

実は、この土日にアントレプレナーシッププログラムの選考会に参加してきました。
また、今週の金曜日には、大学の講演会で”アントレプレナーシップとは何か”について登壇して語ることになっています。

なにかと最近、自分の中でホットなこのテーマについて、改めて今の考え方をアウトプットしてみようと思いました。
(そう、今週の金曜日の予行演習ってやつです)

今回も何かと駄文です。どうぞお付き合いください。

 

【アントレプレナーシップとは何か】

一般的にアントレプレナーシップとは、「起業家精神」と訳され、社会に存在する課題を解決するイノベーションを生み出すためにリスクを懼れない行動力の源泉となる精神を指しています。

様々なアントレプレナーシップのプログラムがありますが、そのほとんどが

1. 経験者の話を聞く
2. 自己内省の機会を設ける
3. 具体的なビジネスプランを考える

といった内容を通じて、マインドセットを行っています。

そして、私を含む多くの若者は「自分らしい人生の生き方」を求めて、こうしたプログラムに参加しています。
若い人が実際に起業をする事例も増えてきて、私自身も一応その一人ではあります。

経営者(ビジネスマン)と学生(参加者・顧客)と塾講師(メンター)の3つの顔を持つからこそ、アントレプレナーシップ教育に対して、思うことが増えてきました。

 

【真のアントレプレナーはアントレプレナー教育を必要としない】

これは多分、真理だと思います。

アントレプレナーシップを持っている人は、アントレプレナーシップを学びにはきません。
そもそも、社会に問題意識を抱えて解決のために行動している人は、既に会社を創って走りだしています。

「どうしたら社会にイノベーションを起こせるか。」なんて考えませんから。
がむしゃらに走り続けています。
逆に言えば、”自分が何をしていいのか分からない”からアントレプレナーシップに参加するのだと思うのです。

「私はこんなふうに成功しました。」なんて自慢話は聞いたってしょうがないのです。(厳密には視野は広がるかもしれないが…。)

 

【経営者の話は”タメにはなる”けど、”役に立たない”】

これも真理だと思います。
私はよく色々な機会で”経営者の成功談”を聞いてきました。

たしかに、「へぇー!スゴイ!参考になるなぁ…」と思うことはありますが、実際に活かされることって本当に少なかったです。

これを読んでいる皆さんもそんな経験をしたことは何度かあると思います。

成功者の成功要因は、複雑多義的で明確に定義することなんてできません。
なぜなら、「その人は運よく成功しただけ」なんてざらですし、時代や環境、ニーズ、物価、あらゆるファクターが複雑に絡まっています。

よく「私は毎日、30分本を読んだから成功しました。」
なんて平気で語る人がいますが、そんなんで成功してたら誰も苦労しません。
本当は裏でもっと泥臭い努力の物語があるはずです。

成功者は基本的には綺麗な部分だけを美化して語ります。だから”羨ましい”と思えます。
ですが、経営を実際にやってみると現実に打ちのめされるなんてことはザラなのです。

 

【自己内省は”気付きになる”が、”自分を変えない”】

これは、就職活動をしていて本当によく思ったことです。
最近では、MBTI診断なるものが流行し、就活でも「自分って何だろう?」と知るために、散々自己分析や他己分析をやらされました。
(ちなみに私は、いつやってもESTP-A(起業家)かENTP-A(討論者)しか出ません。)

やっていくなかで「自分ってこんな一面があったのか!」と気づくことは、たしかに参考になるし、新たな発見になります。
しかし、同時に果たしてどれだけの人が自己内省をすることが、自己の行動の動機付けの変化へと繋がったでしょうか…。

自己分析とは、自己の性質や特徴を知るだけであり、自己の性質や特徴を根本から変えてくれるわけではありません。
言葉を選ばずに言うのであれば、定期的に一回やれば十分です。
残念ながら、自分を知るだけでは”社会に大きなインパクトを与える起業家”にはなれません。

 

【アントレプレナーシップ教育は、”サンタクロース”】

起業家と”アントレプレナーシップ”を学ぶ人の最大の違いは何か。
それは、「リスクを背負うかどうか」です。

言い換えれば、社会のリアルに触れるかどうかの違いです。
例えば、銀行や投資家に「そんなんじゃ投資できない」と打ちのめされたり、日々経営資金が減っていく恐怖と戦ったり…。

そんなことは、ほとんどのアントレプレナーシッププログラムにおいて学ぶことはできません。

私はよく、アントレプレナーシップ教育とは「サンタや幽霊のようなものである」と述べます。
なぜなら、”実体があるように語られるけれども、実体は存在しない”からです。

”机上の空論”・”夢物語”と実際のビジネスの最大の違いは、「リソース(上述で言う実体)が見えるかどうか」です。

現実のビジネスでは、お金や時間、人、知識、スキル、など様々な”リソース”という制約に苦しめられます。
(実際に今、私が関わっているいくつかの事業もまさに、ココで日々悩んでいます。)
彼らは、自分たちの目標であるゴールから逆算を常に行い、限られたリソースの中でマイルストーンを達成できるよう、最善手を選択します。

ここが、アントレプレナーシップ教育にはない致命的なギャップです。
殆どの立案が「 BtoC ビジネス」であることがそのよい証拠です。

もし私が今、0から起業をするなら確実にBtoBから始めます。(厳密にはBtoBtoC)
なぜなら、広告で単価1,000円のお客さんを100人集めるより、企業相手に単価100,000のソリューションを提案する方が遥かに現実的だからです。

自分だけのオリジナルのビジネスを…と言うのなら、なぜBtoBのアイデアがあまり出てこないのでしょうか…。
(これはなぜかというと、一つは”選択肢がない”=”知らない”からだと思っています。それは後述。)

現実の経営、特に一番最初の段階では、”何がしたいか”よりも”何ができるか”、”どうやって生き残るのか”を考える場合が多く、0→1なんて考えられないのです。

 

【アントレプレナーシッププログラムの”ビジネス化”】

私は、昨今のアントレプレナーシップのプログラム自体がビジネス化してしまっているように感じざるを得ません。

塾講師をしていて思うのですが、本来塾の目的は、「勉強を教えてテストの点数を上げ、学校教育では足らない社会全体の学力向上を図ること」です。

そのための手段として各塾が定めたカリキュラムをマニュアルに、授業というサービスを展開しています。

ところが、いつの間にか”お客である生徒を集めて、授業をすること”が目的になってしまいます。
授業をすれば目的は達成であり、生徒の学力向上よりも”数値目標”の達成が重視されます。
これは、塾自体が営利目的であり、リソースの制約に縛られるからです。

 

では、アントレプレナープログラムはどうでしょうか…。
私はどうも「アントレプレナーシップを養成するプログラムを遂行する」ことが目的となってしまっているような気がします。

社会でイノベーションを起こす人財を育てるという本来の目的から離れた結果、「現実を直視させずに、成功者の軌跡を追体験させる」という形骸化が発生します。
アントレプレナーという言葉がこれだけ大きく騒がれているのに、社会で変革を起こす事例が殆どないのは、そのためだと思っています。

「塾に行ったら勉強ができるようになるなんて思うな」と同じように、「アントレプレナーを受けたから、成功者(挑戦者)になれると思うな」と言いたいです。(経営学を学んでも経営者にはなれない的な…)

そして、それを勘違いしている人たちがいわゆる私が嫌いな”意識高い系”なのだと思います。
私が大学1年の頃からアントレプレナーの講義や講演に対してどことなく「再現性がない」と語るのはそのためです。

 

要は、私の心の師である東進ハイスクールの林修先生が述べるように、努力は正しい方向で正しい量だけやらないと報われないのです。
(これを本来語ることは、なんかタブーな気がします。子どもに「サンタはいない」とマジックの種明かしをしているような心地になるからです。)

 

【では、アントレプレナーシップは不要なのか】

私はアントレプレナーシップを”要らない”と思ったことは実は一度もありません。
なぜなら、そういう意識でアンテナを張ることで見えてくること、学べることが本当に沢山あるからです。

言い換えれば、世の中を多角的な視点で捉え、学ぶことができます。

世の経営者は、たしかに優れた視点を持っています。常識を疑い、自分の感覚や理論を信じて世の中を渡り歩いたわけですから、相当な切れ者です。
彼らが何を見て、何を考え、どう行動するのか、は本当に学び甲斐があります。

だから、既に何らかの課題を抱えている人が”自分の視野を広げる”ために飛び込む上で、最高の環境だと思います。
自分はその意味で、アントレプレナーのプログラムに沢山参加して、本当に良かったなと思っています。

 

【社会課題解決における”教養”の重要性】

最近の私は、ご存じの通り”教養”がキーワードです。
それは、私の高校の教育目標にこんな一文があるからです。

”民主的国家社会の有為な形成者として必要な資質を得るため,社会に対する広く深い理解と健全な批判力及び一般的教養を養成する。”

ココにも書いてある通り、社会を広く理解することは、特に起業家にとって不可欠な要素です。

 

そして、広く社会を知るだけでなく、深く考える…その結果として健全な批判力を持つことが必要です。
なぜなら、社会を広く深く理解するということは、ここでは”現実のリソースの制約と向き合う”ということであり、”最適な経営判断”へと直結するからです。

 

もっといえば、広く知り深く学ぶことは、経営における知識という選択肢を増やす、すなわちリソースの拡大を意味しているのです。

若者発のベンチャー成功事例のほとんどは、東大・京大・早稲田・慶応、その他上位国立、私立に集中しているように感じられ、茨大でさえ、ほとんど聞きません。

それはやはり、物事や社会の仕組みをある程度深く学ぶからこそ、経営においても要領よく最適な手段を選択できるだけの知識リソースに圧倒的な余裕があるからです。

 

【行動という超高濃度の教養習得】

多くの人が”行動することが大切だ!”と語ります。これは本当に事実です。
行動を実際に起こしてみないと分からないことは分かるようにならないし、動くことで見えたことも沢山ありました。

私も少なくとも、会社を創らなければ経営は語れないし、アントレプレナーシップに参加していなければ、こんなブログは書けません。
それくらい、”実際に行動してみること”から得られる経験値は、短時間でとてつもないものがあるのです。

ブログの界隈では、まず6割でもいいから公開してみろ。と言います。
完璧主義の私は、高3当時、最初から100%を出そうとしましたが、毎日更新する中で半月後には当時のブログを消したくなるくらいのクオリティに愕然としていました。

まあ、何が言いたいかというと、「勉強して考えることは大いに結構。だけど、悩むひまがあるなら、まず手を動かせ。」ってことです。

 

【行動するとは、自己の環境を変えること】

一般的に自分の身の回りの環境というのは、定数です。変えようと思っても変えられません。
学校や職場の同期を選んだり、家族の性格を直そうと思っても無理なように、変えられないものは変えられません。

ですが、「行動する」ことは、自分がいる環境を自分で変えることであり、自分のステージを唯一変えることができます。

これは昔、あるゲームで知り合った経営者で投資家の方が「周りの人は自分の写し鏡だ。他人に不満があるなら、自分のステージを上げる努力をした方がいい」と言っていたことに基づきます。

深夜のドン・キホーテに屯しているヤンキーには、同レベルのヤンキーしか集まりません。
一流の政治家や経営者の周りには、政治家や経営者しかいません。

偏差値の高い学校に行くことのメリットはそこです。同級生という一番分かり易い環境がハイレベルになり、当たり前の水準が圧倒的に上がることにあります。

 

なりたい自分になる為には、なりたい自分がいる環境に入り込めるだけのステージを上げなければいけないのです。
今の私は、身の回りはみんな経営者だし、関わる友達はみんな誰もが知る大きな会社に就職したり、難関大学の大学院に進んでいます。(マジで地元に帰って仲間と再会すると、刺激とプレッシャーに襲われる…)

そんな状況に身を置いていると、自分で高いレベルの事業を起こしたり、教養を深めるための行動をしたりすることが本当に当たり前になるのです。

 

【聡明な人ほど”リスク”と向き合う】

不思議なことに”教養”を沢山身につければつけるほど、行動しなくなります
なぜなら、リスクや再現性との乖離が手に取るように分かってしまうからです。

多くの大人が”若者の智慧”を求めるのも、このリスクにとらわれない柔軟な思考を求めているからでしょう。
そして、深く教養を身につけ、課題を発見したけど、リスクも見えてなかなか行動に移せない…

そんな時こそはじめて”アントレプレナーのマインドセット”が役に立つと思います。
いうなれば、”行動の動機付け”であり、精神的支柱になるのです。

 

【もし私がアントレプレナーシップ教育をするなら…】

大事なことなので、改めて言いますが、私はアントレプレナーシップを否定しているわけでも、それと対比事例として挙げられがちな学校教育を否定しているわけではありません。

寧ろ、どっちも大切だし、それに助けられてきた身です。
ですが同時に、世の中の綺麗な側面だけを追いかけて、教養を見失いがちになっているのも事実だと思います。

私が本気でアントレプレナーシッププログラムをやるなら…。そうですね…。

① まずは、学校の勉強をきちんと行い、最低でも偏差値60以上を目指すこと。(教養を深める)
➁ 様々な業界の成功者に多角的に沢山の失敗談を話してもらったうえで、成功談との違いを理解すること。(視野を広げる)
➂ 周りの関わる人を全て”経営者”にしたうえで、徹底的なマインドセットを行う。(経営のマインドセット)
➃ 実際に会社を企業したうえで、銀行から最低でも300万円の融資を受けられるようにすること。(実際に行動する)

この4段階を踏むと思います。自己分析とか、ビジネスプランを考えてみようとかは、ほとんどやりませんね。最初から投資家相手の本気勝負です。

これくらいやると、本当にしんどい分、きっとやりがいもあるし、楽しくなってくると思います。知らないけど。

どうか、世間のアントレプレナーシップのプログラムから一人でも多く、民主的国家社会を有為に形成する”リーダー”が生まれると嬉しいですね。
私もその一人になれるよう、日々行動、日々学習の鍛錬を積もうと思いました。

いつもより熱く語ったので、長くなりましたね。
駄文にお付き合いいただきありがとうございました。

 

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